たった一つの言葉でつながっていく人間関係
人との別れを意味する転職や転勤、退職は、送り出す側にとっても送られる側にとっても物悲しいものです。
「一生の間に知り合える人の数はたかがしれている。一つの出会いを大切にしたい」 といった思いを持つ人ほど人との分れを惜しみますが、新しい道に進む側の人にとっては、不安や期待が入り混じり、別れを惜しむどころではない場合が多くあります。
不安な気持ちを抱える人にはそれに相応しい言葉があり、そんな言葉を掛けてくれた人の事はいつまでも心に残ります。
「この人との関係を続けていきたい」と思う気持ちも強くなります。
新たな道に進む人にとって、花束やお金より餞別の言葉一つが強く心に残り続けます。
不安を消し勇気を与える褒め言葉
「どこに行っても大丈夫」「君ならできる」
- その場を去り、新しい道に進む人にとって、これ以上の褒め言葉はないのではないかと感じます。新しい職場や環境に戸惑い、不安を覚えた際、過去に自分がやった仕事や姿勢を評価してくれた人が居た事は大変な自信につながります。
「有難う。本当に助かっていたよ」
- 例えその場を去る立場であっても、そこに居た事実は残り続けます。そのでどのように貢献し、どのように思われていたかはその後の行動の大きな後押しとなります。
「本当に行ってしまうのか?寂しいなぁ」
- 一人の人間として好意を持って捉えられていた事を知る事は、そこに存在していた意義を強く感じる事ができます。
「君を高く評価している。いつでも戻って来い」
- それなりの立場にある人でなければ掛ける事が許されない言葉ですが、不安の念が大きな人にとってこれ以上に安心できる言葉はありません。
定年退職する人への褒め言葉
「ご一緒できて良かったです」
- 年齢による雇用契約の解除を意味する定年では、残していく人達への思いが強く残ります。二度と戻ってこない場所で、一緒に働いた人に自分の存在を有りがたく思われていた事を実感できる言葉は無上の喜びTなります。
「教えを守って頑張っていきます」
- 何かしらの痕跡や爪跡を去っていく場や人の心に残していけた事は、職業生活の締めくくりとしては非情に嬉しいものです。
「落ち着いたら絶対に連絡を下さい」
- 定年記念旅行や立場が変わった事に関する様々な手配など、定年退職前後は慌しく時間が過ぎ去ります。そして、ふと時間が出来た時に物悲しさを強く感じるものです。自分からの連絡を待ってくれている人の存在は非情に有り難いものとなります。
「困った事があったら連絡してもいいですか?」
- 会社の規模や管理レベルによって様々ですが、送り出される側にとっても送る側にとっても、定年退職は準備がし易い会社の辞め方です。実際には定年退職者がいなくて困る事は少ないのですが、求められて存在していた自分を感じさせる言葉は嬉しいものです。
「あなたのようになりたいです」
- 生き方や仕事への姿勢、信念や主義を褒められる事は、人間にとって最上の贈り物となります。
失意の中で退職する人への言葉
「ステップアップ」「自分を試す」といった前向きな理由ばかりではく、人間関係に悩んだり大きなミスを犯してしまって辞めざるを得ない人達がいます。
非常の難しい状況で、掛ける言葉が見つからない場合が多いのですが、何かの縁があって同じ場所で働いた仲間の言葉に救われる事もあります。
「褒め言葉」は基本的にそぐわない状況ですが、掛けるべき言葉はあります。
「すまなかった」
- 辞めざるを得なくなった理由に関して責任を感じ、力になれなかった事を詫びる人の存在は、自分を全否定する気持ちを少なからず和らげてくれます。
「会社なんて星の数ほどある。どこに行ってもやる事は同じ」
- 話し方や事の次第ではかえって傷を深くしてしまいますが、失意の中にある人が気付き難い仕事の世界の常識を説いて上げる事で、意外な程に気持ちが軽くなる場合があります。
「巡り合わせが悪かったな」
- 少なからず心の傷を負った人に対し、新しい場所での振る舞いについてあれこれと説教じみた内容は相応しくありません。相手の事を思った上での言葉でもあっても、相手の心に届く可能性は低くなります。「運」「巡り合わせ」といったコントロール不可能なものに理由を見出す事で少しでも心の負担を軽くしてあげることが得策です。
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